HOME展示室文化祭やぶられた台本>第1章〜2


やぶられた台本(シナリオ) −第1幕−
シーン4      箱森、志賀の陰謀                                
一同、静まり返る。 古川と鈴木が相談している。お互いに口を開くように催促しているが、古川が決心して、 古川  「実は私たちもそんな展示内容に疑問を持っていたの、(鈴木に向かって)ね!」 鈴木  「クラスで戦争についてやるって決まったときは、正直言って『やった』って思ったの。 歴史の授業である程度知識はあるし、資料だってそろっているし…。でも……。」 古川  「こんなに一生懸命書いても、一体何人の人が読んでくれるのかなって、不安になって …。」 佐野  「それは私だって同じよ。でも、見てくれないかも知れないけど、頑張って書こうよ。 泣いても笑ってもあと二週間よ。」 佐野、古川と鈴木を抱き込むように景気付けをする。    箱森の方へ引き返し、 佐野  「あなた達はそのまま劇をおやりなさい。私たちは私たちなりに展示物を作るから。 それでクラスとしての体裁も保てるでしょ!」    しばらくの間。 箱森、正面を向いたまま、 箱森  「教室展示はいっさいなしだ。」    静まり返る。 しばらくの間。 佐野  「なんで?」 箱森、重い口を開くように、 箱森  「三年三組は体育館でステージ発表をやることに決まった。」    一同、驚きの声。「えーっ!」「なんでー?」「うそー!」「とうしてー?」 箱森  「志賀、説明してやりなさい。」 志賀  「えー、それはですねえ…。昨日の放課後、学級委員として先生に交渉に行った結果、 見事にステージ発表への変更が認められたわけであります。」 永吉  「なんでそんな勝手が通るんだよ!」 志賀  「学級委員だからですよ、ぼくが!リーダーなんです。」 金子  「リーダーだってよ。ボックスの使いっぱのクセしてよ!」 志賀  「はっ、使いっぱで結構、毛だらけ猫灰だらけってな。」    古川、鈴木を先頭に伊藤、秋里がドアへ歩み寄る。    先頭の二人を押さえるようにミーハー三人組が立ちはだかる。 志賀  「先生にはみんなの意見ですって言ってあるんだ。今更それが違いましたって事に なったら、きっと大変なことになるだろうな。また一時間のお説教のあと、文化 祭なんて中止だーっなんてことになるかもな。」 伊藤  「なっ、なんてことだ!」 秋里  「もう、だめだ…!」    佐野、ミーハー三人組に向かって、 佐野  「卑怯よ!あんた達。」 ミーハー三人組も動揺して、声を震わせながら、 平尾  「わ、わたしたちだって…、それは知らなかったわ…。」
シーン5      動揺する心                                
静まり返る。 奥の方では… 中野  「おい、あの劇、全校の前でやるのか?」 落合  「ちょっとやばいんじゃないかな。」    手前側では… 松永  「やだなおれ…、恥ずかしいよ。」 五十嵐 「教室でやるって言うから、どうせ仲間しか見に来ないと思ってたもんな…。」 宮口  「おれ、人前で何かやるのって大の苦手だぜ。赤面しちゃうんだよ。」 金子  「おっ、俺も俺も!」    柬理、志賀の耳元によって、 柬理  「おい、今からでもどうにかならないのか?」 志賀  「だって、箱森くんがやるって言うんだから、しかたないだろ。」    これらのやりとりを聞いていた箱森が肩を震わせ、怒り出す。 箱森  「あまえら、さっきから何だー!勝手なこと言ってんじゃねえよ!このクラス のボスは誰だ?」 箱森、仲間連中の顔を見回すが、みんな目を合わせない。    唯一、仁平だけと目が合う。    仁平、びくっとして、 仁平  「箱森様です…。」 箱森  「このクラスで一番えらいのは誰だ?」 仁平  「箱森様です…。」 永吉、すてばちになり、つぶやく。 永吉  「喧嘩っ早いだけのボス猿じゃん。」 箱森、キッと永吉をにらんで、近づきながら、 箱森  「百歩ゆずって俺様が力が強いだけの男としよう。(語気を強めて)その俺に へーこら頭を下げるお前らは何者なんだよ。猿以下だ!」    しばらくの間。 秋里  「本当だ、俺たち猿以下かも知れない。」    秋里、後ろを見渡して、 秋里  「本物の猿もいるみたいだけど…。」 後ろの男子一同、猿と指摘された対象のなすりあい。    一瞬、宮口に視線が集まる。 宮口  「ち、ちがうよ、何で俺を見るんだよー!」
シーン6      本当の理由                                
秋里  「みんな、身勝手すぎるんだよ。自己中心的すぎるんだよ。文化祭のテーマを 決めたときだって、自分は楽な分担ばかり選んで、大変な仕事は誰もやりた がらなかった…。」 古川  「そういえば体育祭の時だってそうだったよね。みんな障害物競走以外は出な いぞー、なんて言って…。」 鈴木  「応援旗を誰が作るかでも、もめたよね。結局、日の丸の旗になっちゃった。」 仁平  「俺たち、何をやってもダメだった…。」 五十嵐 「でも、どのクラスにも負けないくらい楽しいよなぁ、このクラス。」 永吉  「(独り言のつもりで)ぜんぜん楽しくないぜ!」 五十嵐 「三年三組が楽しいと思う人、はーい!」    ボスの仲間が手を挙げる。    ミーハー三人組は互いに気にしながら挙げる。    箱森は表情を変えずにしばらく様子をうかがっている。    箱森、机を思いっきりたたいて威嚇する。    無関心な男五人組は、びくっとして、恐る恐る手を挙げる。    永吉、男五人組の手を無理矢理下ろしながら、 永吉  「何で手を挙げるんだよぉ!お前らみんな本当にこれでいいって思ってんのかよ。」    中野  「だって、逆らうとあとが怖いし…。」 落合  「俺たちには関係ないことだよ。」 伊藤  「…関係ない?…ぼくたちのクラスのことが、関係ないだって?そんなこと言って るからあいつらの良いようにされちまうんだ!」    間を割って入るようにして、 松永  「別に良いじゃんか。こいつらは勉強するために学校に来ているんだからよ。 俺たちだってそうだよな。」    仲間、うなずく。 松永  「そのための息抜きなんだよ、文化祭なんてものは。」    佐野がゆっくりと話し出す。 佐野  「ねぇ…、戦争がどうして起こったか、知ってる?」 柬理  「なっ、なんだよ急に…。」 五十嵐 「そんな一言で答えられる分けないよ。いろんな事情があったんじゃないの。」 佐野  「そうよね、答えられないよね…。ねぇ、アメリカの人達が今でも『Remember Pearl Harbor!』って私たち日本人を恨んでいるって知っている?」 仁平  「真珠湾の奇襲攻撃、トラトラトラか…冗談じゃないよな、俺たちはまだ生まれ てもいなかったんだぜ。」 松永  「それに、アメリカだって、原爆を落としたんだからさ、おあいこだぜ。」 古川  「そんな…、あいこっていうの?そういうのって…。」

   

   第一幕(オープニング/戦争ごっこ?/反発する者たち)
   第一幕(ボスの追い打ち/動揺/戦争の理由)
   第一幕(真実を見つめて/いま、クラスが団結するとき)
   第二幕(舞台は沖縄/みんなで分け合った乾パン)
   第二幕(兵隊さんは手榴弾を/勇気ある決断/エンディング)
   参考文献、おわりに



 
 

 

Copyright (C)  1996-2010  M.Tanaka.  All Rights Reserved.

このサイトの画像および文章は著作権法により認められた範囲を超えての無断利用を禁止します。
使用許可および問い合わせはこちらにお願いします。