HOME電子紙芝居(オリジナルアニメーション)>ストーリーの決定まで


 

●特別企画●
電子紙芝居(オリジナルアニメーション)のススメ
クラスで、部活で、オリジナルアニメに挑戦してみませんか?
今年の文化祭はこれで決まり!

ステップ 2 脚本を書こう

あらすじが決まったら、いよいよ脚本づくりです。

ここでの脚本は、あらすじをもとに、ストーリーを肉付けしていく感じで気軽に書いていきましょう。

使い慣れたワープロソフトで、アイデアを膨らませながらどんどん書いていきます。

担当の先生にまかせるか、脚本家グループを結成して分担して書くかは集団の実態に応じて決めましょう。


 

次に、私が担当した美術部での例を紹介します。

文化祭2005 谷原中美術部 「お化けのクリスマス」脚本

 

 今日は1年に一度のお楽しみ、ハロウィンです。人間の世界では、子どもたちが各家庭をまわり、お菓子をもらって歩くのが風習となっていますが、お化けの世界ではちょっと違います。お化けの子ども達は思い思いの格好をして、人間の子どもたちを驚かすのです。でも、ここにちょっと変わり者のお化けの子がいます。このお化けの子の名前はジェフ。どんな変わり者かですって?それは、人間を驚かすことが大の苦手だったのです。

「みんな楽しそうだなぁ。ぼくもみんなみたいに人間を驚かせたいなぁ…」

 ハロウィンの風習はいまや世界に広がっていました。もちろん、この日本でも…。

少女はママと手をつないで、林の中を歩いています。(実は病院の敷地内)

片方の手にはカボチャのランプを持っています。

「ねえ、ここからは私ひとりで行ってみていい?」

「いいけど…、理奈ちゃん、肝試しをしているみたいね。」

「いいの!ママは森の出口で待っていて。」

木の陰からお化けのジェフがのぞいていました。

「この子ならぼくにも驚かすことができるかなぁ。」

木の陰に隠れて少女を待つ。

「ふふっ、気の弱そうな女の子だぞ。」

少女はカボチャのランプを持って、おそるおそる歩いています。

「この子を驚かすことが出来たら、学校にみんなに言ってやるぞ。ぼくが本気になればざっとこんなもんさってね。」

少女がいよいよお化けが隠れている木に近づいたとき、

「お化けだぞぉ〜!」

少女とお化けのジェフはしばらく見つめ合う。

「あっ、あの…お化けだぞ〜…」

急に苦しみ出す少女。

動揺するお化けのジェフ。

「あっ、あの…、どうしよう…!」

「く、苦しい…」

「だけか来て〜!」(お化けの叫び顔のアップ)

 

ここはお化けの世界の学校。お化けの子どもたちは一人前のお化けになるために、ここで毎日勉強をしています。

「こんどのあゆみ診断テストのヤマはどこかなぁ」

「お化け数学の三浦先生が、難しい問題は出ないぞぉーって言ってたらしいよ」

「難しいと言えば人間語だよね。ヒヤリングの放送問題が聞こえにくいんだよねぇ…」

「この学校の放送器具は古いからなぁ。」

お化けのマリリンがジェフに気づく。

「どうしたマリリン。」

「ジェフくんが寂しそうだから…」

「ほうっておきなよ。ジェフはもともと暗いんだから。」

「そうそう、ジェフに関わると人間を驚かせなくなっちゃうよ」

「知ってるか?あいつこの間のハロウィンで人間の女の子を怪我させたんだってよ」

「えー本当?驚かせないからって、人間を傷つけるなんて最低のお化けね!」

ジェフに近づくマリリン。

「ジェフくん、お元気?」

「……。」

「ねえ、私だって最初はなかなか人間を驚かせなくて困ったこともあったのよ」

「でも、マリリンさんは、優等生じゃないか。」

「ジェフくんだって、頑張れば…」

「ダメだ、ぼくなんか。人間の女の子に怪我をさせちゃったし…」

他の仲間が来て、

「そうそう、ジェフはダメダメくんだよ。」

「ちょっと、話に割って入らないで!」

別の仲間が

「だって、焦れったいんだもん。」

「そうよ、せっかくマリリンが気にかけてくれているってのに、一体何を悩んでいるのよ!」

「ぼく、人間の女の子に償いをしたいんだ。」

教室中がどよめく。

「人間に償いをするだと?」

「何を言っているんだこいつ!」

「我々お化けと人間は昔から敵対関係にあるのよ。」

「そうよ。我々お化けは明るいところが苦手で、唯一過ごしやすい夜でさえも、町を煌々と照明が照らし、どんどん我々お化けの活動場所が減っているのよ!」

「その仕返しに人間達を驚かせている我々の行動は厳粛なる儀式なのだ!」

「でも、中には我々と人間が共存していた時代もあったことを考慮し、驚かすだけで傷は付けない暗黙のルールを…」

と言いかけたところで、ハッと気づく。

「そのルールをぼくが破っちゃったんだ…だから償いたいんだ…」

お化けのジェフは涙をぽろぽろと流す。

馬鹿にしていた仲間が、表情を崩して、

「でもどうやって…」

沈黙。

【以下 略】

ちょっと解説!

 美術部としてアニメーションづくりに挑戦する最初の年。投票の結果決まった「お化けのクリスマス」は、ハロウィンからクリスマスまでの、人間の少女とお化け学校の子どもたちの心温まる交流を描こうとスタートしました。

 ここに紹介している脚本はほんの一部ですが、登場人物の名前もまだ決まっていない段階で、どんどん書き上げていったことがお判りになると思います。このように、脚本を書くにはある程度のスピードが必要で、気持ちが乗ってきているときには、間に休憩を入れずに一気に書き上げていくこともあります。

 

 

文化祭2006 谷原中美術部 「61年目のアルバム」脚本

 

今は夏休み。

すがすがしいある朝、あずさと吹奏楽部仲間が登校している。

正門前の花壇で、おばあさんが花の手入れをしている。

あずさ 「おはようございます。」

おばあさん「あら、あずさちゃん。今日も部活動かしら?」

あずさ 「うん、来週が発表会なの。あっ、よかったらおばあさんも聴きに来て。これチラシです。」

チラシの日付は2006年8月15日

おばあさん「おや、うれしいわあ、こんなおばあさんを誘ってくれるなんて。」

友達A 「いつも学校のお花をきれいに手入れしてくれているおばあさんだもの、吹奏楽部全員で歓迎します。」

おばあさん「ほんとにありがとうね。おら、この日付は…」

友達B 「わかります?終戦記念日にちなんで、平和を願うコンサートにしようって、みんなで考えたんです。」

おばあさんの表情が一瞬曇るのを不思議そうに見つめるあずさ。

部室。

友達C 「ねえ、あずさ。昨日預けたみんなの楽譜、見あたらないんだけど、どこに置いてあるの?」

あずさ 「あっ、しまった。教室に置いてきちゃったぁ。ちょっと待ってて、取ってくるから。」

友達A 「相変わらずそそっかしいわねぇ、あずさ。」

友達B 「早くしなさいよ、みんな待っているからねぇ(笑)」

和やかな笑いの中、急いで教室へ向かうあずさ。

あずさ 「あったあった。これこれ…」

そのとき、突風が吹いて、楽譜が窓の外へ飛んでいきました。

あずさは急いで後を追いかけました。

ベランダへのドアに「ベランダへの出入り禁止! 生活委員会」の張り紙。

両手、両足、口をフルに使って楽譜を捕まえるあずさ。

最後の1枚に手が届きそうになったとき、また突風が吹く。

思わずベランダから身を乗り出すあずさ。

ベランダの手すりにひびが入り、あずさは落下する。

「きゃぁぁぁぁー!」

ドスン!

ゆっくりと目を開けるあずさ。

青空が見える。

少女がのぞき込む。

さつき「大丈夫?」

あずさ「わたし…生きている?!」

あずさはウサギの飼育小屋に山盛りに集められた干し草の上に落下していた。

さつき「あなた、屋根に上って何して(い)たの?」

あずさ「屋根の上って…」

ベランダを見上げるあずさ。

そこには木造平屋建ての校舎の屋根が見えるだけ。

あずさ「あれ?私、3階のベランダから落ちて…」

さつき「さんがいの…べら…なに?ねえ、あなた、変わった服着てるね。」

あずさ「服…?えっ?」

あずさ、少女の見慣れない服と自分の制服を見比べて、戸惑う。

さつき「大丈夫?屋根から落ちて、頭を打ったの?あっ、あなた東京から疎開してきた子でしょう。お母さんが言っていたもの。東京に空襲が何度もあるから、埼玉に縁故疎開してくる子が増えてきたって。この学校の生徒の親戚なのね。ねっ、そうでしょう?」

あずさ「空襲…疎開…えっ、何を言っているの?この人…」

さつき「いいなぁ、東京の人は。着る物もおしゃれだなぁ。あっ、私さつきって言うんだ。あなたは?」

あずさ「私、あずさ…、私…東京じゃなくて、ずっと埼玉に…春日部に住んでいる…」

さつき「えっ?そうなの…」

あずさ「さつきちゃん、ここはどこなの?」

さつき「埼玉県…春日部市だけど…」

あずさ「そ、そんな馬鹿な。今日は何日?」

さつき「8月○○にち…昭和20年よ。」

あずさ「しょっ、昭和20年…!?」

周りの景色はのどかな農村風景。

あずさの頭は混乱する。

セミの声が鳴り響く。

さつき「あずさ…さんだっけ?やっぱり頭を打ったんじゃないの?様子が変よ。」

あずさ「私、平成18年8月○○日に、教室の3階ベランダから落ちたの。昭和20年なんかじゃないわ!さつきちゃん、うそつかないで!」

さつき、あずさの取り乱しように戸惑っている。

あずさ、さつきの肩に両手を伸ばして、

あずさ「平成18年よ、わかる?西暦2006年!昭和20年なんて、えーっと、西暦では1945年でしょう。61年前じゃない。誰が信じるの、そんなうそ。」

さつき、心配そうにあずさの頭を両手でなでながら、

さつき「あずさ、あなた屋根から落ちて、頭が変になっちゃったのね。かわいそう。」

「カラーン、カラーン」

始業の手持の鐘がなる。

【以下 略】

 

ちょっと解説!

 この年に決まった案は「屋上で友達とふざけていたら、転落してしまう。気づいたら戦時中の日本だった。」という一行のあらすじでしかありませんでした。時代が戦時中ということもあり、学校の図書館や埼玉県立平和資料館で資料を読みあさって、時代考証をするところから始めなければなりませんでした。時間に余裕があれば、美術部の生徒と一緒にその作業をしたかったのですが、結局、顧問である私が1人でやってしまいました。

 舞台を現代の中学校から戦時中の国民学校へ移すタイミングと、男女が別学だった国民学校で、男女の会話をどのように自然に組み入れていくかが最初の関門でした。

 タイムスリップした主人公が出会った少女と、現代で再会するというラストシーンが思い浮かび、そのラストシーンに向けてストーリー自体はどんどん頭の中で進んでいきました。
 


 


次へ進む

HOME

 


 

Copyright (C)  1996-2010  M.Tanaka.  All Rights Reserved.

このサイトの画像および文章は著作権法により認められた範囲を超えての無断利用を禁止します。
使用許可および問い合わせはこちらにお願いします。